【テツ旅、バス旅 23】フルムーン40周年 鎌倉 淳


 フルムーン夫婦グリーンパスが、今年も発売開始となりました。夫婦ふたりの年齢が88歳以上であれば、JR全線のグリーン車が、新幹線、特急を含めて乗り放題(一部列車除く)になるという切符です。初発売が国鉄時代の1981年ですから、40周年を迎えました。

 「フルムーン」は「ハネムーン」に対する造語で、この切符の発売を機にシニア旅行の代名詞として定着しました。法師温泉を舞台にした上原謙、高峰三枝子のCMをご記憶の方は、いまや立派なフルムーン世代でしょう。

 合計88歳ですから、同い年の夫婦なら44歳から利用できます。1981年の44歳はシニアの入り口だったかもしれませんが、2020年の日本人の平均年齢は47歳。44歳は現役世代ど真ん中です。平均初婚年齢は男31歳、女29歳なので、日本の夫婦の半分以上が利用対象に含まれるでしょう。幅広い利用対象を持つきっぷに成長したわけです。

 基本的なルールは40年間変わりません。しかし、実質的な効力には変化があります。

 発売当初の新幹線は東海道・山陽新幹線だけでしたが、この40年で新幹線網が全国に広まり、フルムーンパスで1日に移動できる距離は格段に長くなりました。一方で、以前は利用できたB寝台は、「北斗星」などブルートレインの廃止により、利用できなくなっています。

 発売当初は7日間用のみの設定で、価格は7万円でした。現在のフルムーンパスは5日、7日、12日用があり、7日用は10万4650円。消費税分を勘案しても3割ほど値上げされています。それでも、破格であることに変わりありません。 

 フルムーンパスの功績は、「ちょっと贅沢(ぜいたく)な旅」の楽しみを、身近にした点でしょう。また、グリーン車に乗れるなら遠くに出かけてみようという、新たな旅行需要を創出した貢献も見逃せません。こうしたシニアの旅のスタイルが定着したことで、フルムーンは長く愛されるきっぷとなりました。

 ただ、「夫婦」という利用条件に関しては、結婚の形が多様化し、生涯独身の方が増えている状況で、見直してもいい時期が訪れている気がします。破格な切符なので、利用条件にハードルを設けることは必要ですが、より多様性を受け入れる形での進化を期待したいところです。

 (旅行総合研究所タビリス代表) 

 

 
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